7月22日(水)の日経新聞によると、「のれん」の償却については、日本の会計基準としては均等償却を維持し、国際会計基準の「のれん」を非償却とし価値が下がった場合に減損処理で対応するのとは一線を画すような方向のようです。
会計基準の動向は、中小企業にとっては、強制適用される場面もありますが、あまり大きな影響はないような気がします。しかし、大企業や中堅企業にとっては、非常に大きな問題であり、注視しておく必要があると思います。会計制度自体は、長年税務に携わってきた私としては、それほど深く携わってきたとは言えませんが、過去には民間企業に出向していたこともあり、それなりに経験はしました。
平成12年7月にある関西の企業の経理部に2年間の出向となりました。私は、それまで国税局において専ら税務調査に従事し、会計のことについては、それほど意識をしていませんでした。せいぜい法人税の別表のチェック上、財務諸表において税務上で損金と認められない引当金やその他の処理で税務上認められないものがないかを中心に眺めていただけのような気がします。
しかしながら、出向した平成12年はまさに、会計ビックバンといわれるほどに、次から次へと新しい会計制度が導入され、日本の企業会計は大きな変革を余儀なくされていた時期でもありました。というのも、この少し前の1999年には、日本の3月決算の企業が海外向けに作成したアニュアルレポートに「この決算書は日本基準に基づくもので、国際的に通用するものと異なる」という趣旨のレジェンド(警句)が付記されたためです。これにより、日本の産業界には大きな衝撃が走ったようですが、この付記されたレジェンドについては、日本の会計事務所が提携関係にある世界大手の会計事務所からこのような措置を取るよう強く要望があったようです。
私が、出向した会社でも、すでに導入されていた税効果会計をはじめ、連結財務諸表の拡大、キャッシュフロー計算書、退職給付会計、金融商品会計、減損会計、ファイナンスリースの売買処理の強化等、次から次への新しい制度に対応せねばならず、子会社を集めては何度も研修会を開催したことを記憶しています。会計士からは、これらの会計制度への移行は不可避であり、場合によっては相当の金額の損失を覚悟せねばならないなどの、アドバイスを受けていました。
また、あるとき会計士から、「全面時価会計」の導入も検討するようにとの指摘も受けました。金融商品会計が資産に対する時価評価であるのに対し、全面時価会計は負債をも時価評価するというものであるとの説明でした。実勢レートを超える金利で借入を行っていると、多額の評価損が発生するとのことでした。減損会計にしろ、全面時価会計にしろ、これまでには考えられないほどの多額の損失を計上しなければならないこともあり、日本の企業にとってはまさに青天の霹靂であったと思います。「全面時価会計」は当時国際会計基準ではなく、米国会計基準で採用されていた考えでしたが、会計士が言うには米国会計基準が力をもっており、近々日本にも導入されるであろうとのことでした。しかし、その後米国のエネルギー大手エンロンが起こした巨額の不正会計事件をきっかけに、米国会計基準はあまり言われなくなったような気がしますし、会計士もそれ以降は全面時価会計の話はしなくなりました。
投資家をミスリードしないためには、世界的に共通した会計制度が必要なことは言うまでもありませんが、個人的には減損会計などは、営業成績が損益に現れる上に、さらに資産まで減損する必要があるのかという気もします。今回の、のれんの償却について、日本の会計基準が国際会計基準と一線を画し、均等償却を採用するのは、のれんの価値が下がった場合に予期しない巨額の減損損失が生ずることがその背景にあるようです。のれんの償却に対しては、のれんが大きな企業ほど利益が少なるなどの批判もあるようですが、のれんを非償却としたい日本企業にとっては、国際会計基準を採用するなどの選択肢もあるようです。